アートの森の小さな巨人...と名付けられたハーブ&ドロシー

残念ながら3月18日で映画は終了してしまいましたが、もしチャンスがあればぜひご覧ください。
映画公式HP『ハーブ&ドロシー』
ニューヨークに住む普通の夫婦の話です
でも違っていたのは!
夫妻はものすごいアートコレクターだったのです!

ハーブ・ヴォーゲルは1922年生まれ、高校を中退して郵便局に勤めていました。
ドロシー・ヴォーゲルは1933年生まれ、大学院を卒業後、公立図書館に司書をしていました。

1962年に結婚し、それからハーブは夜学で美術を学びます。
ドロシーは特に美術には興味なかったのですが、ハーブの影響で猛烈に美術に詳しくなっていきました。

そして、二人がはじめたのがアートコレクションです。

ドロシーの給料を生活費に充て、ハーブの給料をすべて現代美術品を購入する費用に充てました。
1LDKのアパート住まいだったので、二人が決めたアート購入の約束は
①ハーブの給料で買えることと
②アパートに入ること
 
でした。
そこで、作品をミニマルアートとコンセプチュアルアートに絞ります。
ニューヨークである展覧会にはほとんどすべて足を運び、直接アーティストと交渉して購入します。

彼らが買いたいと思う作品の基準は「美しい・きれい」「気にいった」だけ。
展覧会の初日、客たちがワインなどを片手に語り合っている中、二人は真摯に作品を見て回ります。

そして40年の歳月をかけて集めた作品の数、4,782点。

購入した作家たちの顔ぶれは、
ドナルド・ジャッドクリストとジャンヌ・クロードリチャード・タトルチャック・クロース
など、今や世界的なアーティストたち。

こんなドラマチックな話は実話で、このドキュメンタリー映画を撮ったのが日本人の女性監督・佐々木芽生(めぐみ)さん。
夫妻のことはアメリカでは有名で、映画にしたいと申し出る監督やプロデューサーは数多くいたようですが、実現させたのは彼女だけでした。
撮影には4年間の歳月をかけたので、夫妻はすっかり監督を信頼していたようです。

ただ1場面、カメラが外に出されたことがありました。
それは、作家との値段交渉場面でした。
 
クリストのドローイングが欲しいとアトリエを訪れたら、あまりに高価で手が出なかったそうですが、後日、クリストのパートナーであるジャンヌが夫妻に電話してこう告げたとか。

「私たちは制作で家を長期間空けるけど、その間、猫を預かってくれたらドローイングを譲っても良いけど」と。

夫妻、大の猫好きで、もちろんすぐにOKの返事をして、クリストの有名な「ヴァレー・カーテン」(コロラド州ロッキー山脈の400メートルに及ぶカーテン)を手に入れたのです。

夫妻は収集したコレクションを1点もお金に換えることなく、1992年、コレクションのすべてをアメリカ国立美術館ナショナルギャラリーに寄贈することを決意しました。
1000点余りは同美術館の永久保存となり、残りは全米50州の美術館に50点ずつ寄贈したのです。

まるで、嘘のような本当の話。

アートとともに生きるって、地位やお金がなくとも可能だということをハーブ&ドロシーが教えてくれました。

宮本亜門の「金閣寺」、ニューヨークのリンカーンセンター・フェスティバルに招聘!

神奈川芸術劇場のこけら落とし公演「金閣寺」、先日キャナルシティ劇場で観劇した話を書きましたが
なんと!というか、
やっぱり今年7月に開催されるアメリカ最大の舞台芸術の祭典といわれる「リンカーンセンター・フェスティバル」に招聘され、上演されることが決まったそうです。

1996年に始まったこのフェスティバル、「世界一巨大なショーウインドー」といわれ、目利きのプロデューサーが世界各国から作品を厳選して上演するということで有名らしいです。

神奈川芸術劇場でこの作品を見たプロデューサーが招聘を決定したとか。

かつては「近代能楽集」や宮本亜門のミュージカル「太平洋序曲」が、そして昨年は蜷川幸雄の「ムサシ」(藤原竜也)が上演されています。
まさに宮本さんが意図した「日本的なもの」がニューヨークで、海外の人に鑑賞されるわけです。

やっぱり!と思ったのは、この作品の演出が海外公演を意識したものだったから。

金閣寺の象徴となるホーメイといい、大駱駝艦を使った舞台転換といい、
海外の人の目から見たら日本的だと思うだろうなあと感じましたから。
宮本さんの意図が見事に当たったわけですね。

森田くん、世界の舞台でデビューです!

ついでに、こんなトークショーがあったそうです。
行きたかったああ

会場:神奈川芸術劇場ホール2011年2月26日 13:00~16:30

<第一部:対談「劇場って何?」>
蜷川幸雄(彩の国さいたま芸術劇場芸術監督)
宮本亜門(KAAT芸術監督)

<第二部:座談会「芸術監督って何?」>
宮田慶子(新国立劇場芸術監督)
串田和美(まつもと市民芸術館芸術監督)
宮本亜門(KAAT芸術監督)

参加した人の報告を見ていると、ホール定員が1,000名ほどなのに、入りは3割程度だったとか。

もったいない!
このメンバーで話が聞けるなんて今後はないかもしれないのに...。
広報不足なのかなあ。
確かに私も知っていればどうにかして行ったはずだし。

聴いた人の話では、蜷川さんのコトバ
●公演ぎりぎりまで変える。俳優も替えたことがあるらしい。
●「金閣寺」主役・森田剛に、「宮本より僕は丁寧にやるから、次は僕のに出演してね」と言ったらしい
●公共の劇場が担うことは、知られていない芝居もやるということ。コクーンは若い役者たちにコンスタントに場を与えられるようにすることが使命 
●劇場は信頼されることが重要 
だったそうです。

今注目は新国立劇場です。
2010年9月から宮田慶子さんが芸術監督になって、見たい芝居が目白押しとなりました。

2月に再演された「焼肉ドラゴン」は4月16・17日に北九州芸術劇場にやってきますよ。
2008年に初演されたとき、その年の演劇賞を総なめにしました。

1970年、大阪万博の時代の在日コリアン一家の話。
笑って泣きます。
まだチケットあればぜひ!
超おすすめです。

 

湯布院玉の湯楽しみました!

毎年この時期に、10人ほどの大人数で湯布院 玉の湯 宿泊贅沢ざんまいツアーやっております。
このツアーに参加するため、東京やロスアンゼルス(たまたま)からやって来るメンバーもいます。

こんなツアーを始めてなんと9年になりました!
来年は10年を迎えるので、「目指せ!連泊」です。

旅館玉の湯の素晴らしいおもてなしスピリットは、何年経っても変わりません。
フレンドリーなのにきちんと距離も保っています。
部屋もお風呂も楽しみですが、なんと言っても料理ですね!

ご堪能ください!

2日目の朝は雨でした。
雪の日もよし!
雲ひとつない快晴の日もよし!
そして雨の日もまたよし!の湯布院・玉の湯であります

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おひな様の季節なのでまずちらし寿司が出てきました

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この前菜から始まります

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今回は「しゃぶしゃぶ」と「すき焼き」をお願いしました。
しゃぶしゃぶはクレソンとシャキシャキのレタスでいただきます

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これはすき焼き、本当に肉の味と野菜の味が堪能できます

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デザートは5種類ほどから選べますが、今回は「あんみつ」にしてみました

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これは、朝食、迷うことなく洋食を選び、この名物・クレソンスープをいただくのを楽しみにしています

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さて、宴で飲んだワインたち。
すみません!持ち込みさせていただきました

CHAMPAGNES:
・GHマム N.V.
・ボランジェ・スペシャル・キュベ N.V.
VINS BLANCS:
・シャブリ タイユバン 2008
・マコン・ビラージュ コント・ラフォン 2009
・マルグラ・ガヴィ・デ・ガヴィ 
VINS ROUGES:
・ブルゴーニュ・ルージュ ルロワ 2000
・シャトー・ランシュバージュ 2004
・ムートン・カデ(80周年記念エチケット)2008
・フェイティクリネ・ポムロール 2002
・キャンティ・クラシコ マキャヴェリ 2006

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毎年このチーム。万障繰り合わせて集まります!

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古田新太のオッカケやってます

年に4~5回は東京まで出向き芝居を見ていますが、必ず見るのは「劇団☆新感線」

それに合わせてスケジュールを調整し、2~3日間で芝居を4本くらい見ます。

同じ時期にやってくれていると嬉しいのは、野田秀樹の野田地図、蜷川幸雄、三谷幸喜などの芝居。
今年は三谷幸喜生誕50周年記念なんで、1年中三谷さんの芝居は何かやってますよ。

で、ほとんど15年くらいオッカケをしているのは
「新感線」の看板役者・古田新太

「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」を見て、なんてカッコ良い芝居をする人なんだとココロ奪われました。
それ以来、古田新太が出る芝居をチェックしています。

新感線はもちろんですが、話題の演出家の作品にはほとんど声がかかってますから。

たとえば野田秀樹の野田地図では1997年の「キル」から「パンドラの鐘」「走れメルス」「贋作 罪と罰」、そして昨年の「ザ・キャラクター」などに出演。野田作品では常連です。
蜷川幸雄では2001年の「真情あふるる軽薄さ」から2007年の「薮原検校」、そして今年の「たいこどんどん」。
三谷幸喜作品は「VAMP SHOW」、
松尾スズキは「キレイ」、
ケラリーノ・サンドロヴィッチは2003年「SLAPSTICKS」に2007年の「犯さん哉」、こちらも今年夏に公演予定。

名だたる演出家が使いたくなる役者なんです。

昨年は野田作品や新感線の「薔薇とサムライ」出演などで第45回紀伊國屋演劇賞・個人賞も受賞しています。

新感線は別にして蜷川作品での古田さんには迫力があります。
薮原検校」は井上ひさしさんの脚本でもあるのですが、ものすごくワルの検校を演じていて好きでしたねえ。
なので、これまた井上さんの追悼芝居となる「たいこどんどん」も見たいと思ってます。

で、今回なぜ古田さんの話題なのかというと博多駅にできた「T・ジョイ博多」でのオープニング記念として、新感線の舞台を映画にした「ゲキ×シネ」特集が上映されているからです!

この上映は6月25日に公開される「薔薇とサムライ」まで続きますので、これまで新感線の舞台を見たことがない人、私も古田新太好きという方はお見逃しなく!の企画です。

おすすめは「髑髏城の七人
これは染五郎バージョンもぜひ!

歌舞伎役者の市川染五郎は「阿修羅城の瞳」を見て「これぞ、現代の歌舞伎だ!」と感動し、自ら松竹に話を通して新感線と染五郎とのタッグマッチが始まったとか。

その真骨頂ともいえるのが「朧の森に棲む鬼」。

舞台で見て鳥肌がたちました。そのカッコ良さに!
すべてがカッコ良い。
この作品の阿部サダヲがすごいですよ。

ゲキ×シネでも3回は見ました。
もちろんまた見に行くつもりです。

ということで、古田新太&ゲキ×シネのご観覧をおすすめです。

メディア芸術オープントークなるものに参加

文化庁が主催している「メディア芸術オープントーク」、意図は以下の通り。

文化庁では,マンガ,アニメ,ゲーム,メディアアートなどのメディア芸術の関係者・関係機関のネットワークを構築し,メディア芸術に関する情報の収集・発信と関係機関等の連携・協力を推進することでメディア芸術の一層の振興を図る「メディア芸術コンソーシアム構築事業」を平成22年度から実施します。

とのことで、会場の福岡アジア美術館に足を運びました。

隣の会場ではなんと!萩尾望都先生のトークショーが。
こちらのトークショーは20倍という倍率で抽選に当たった人たちが集まっていたとか。

メディア芸術の方はというと、偶然通りかかった人たちも参加というのんびりさでした。

トークの参加者は京都国際マンガミュージアムを関わった京都精華大学芸術学部の島本浣さん
アーティストでもある東京藝術大学大学院映像研究科の藤幡正樹さん
カルチュラルスタディーズの中心的な存在である東京大学大学院情報学環の吉見俊哉さん
そして「趣都の誕生 萌える都市アキハバラ」の著者である明治大学国際日本学部の森川嘉一郎さんの4人。
森川さんが基調講演でした。

出席してはじめて知りました。
今日のテーマは「オタク」...。

大学院生時代、私の回りにも「オタク」研究者はたくさんおり、ず~っと話を聞いているのは苦手かもと思ったのですが、
森川さんの話がおもしろかったああ。
彼は、元々建築の出身、ある時、福岡・九州にも縁が深い磯崎新さんにヴェネチア・ビエンナーレの日本館コミッショナーをやれと声をかけられたのだとか。

そして開催されたのが「おたく:人格=空間=都市」展。

これが評価され、現在は明治大学において「東京国際マンガ図書館」(仮称)を2014年度に開設すべく、準備を行っているそうです。

国をはじめとする自治体が文化、特にこのようなサブカルチャーに関与してくるというのはいかがなものか?という疑問があるので出席したんですが、森川さんの明快な答に目からウロコが落ちました。

要はアーカイブの重要性なんですね。

森川さんいわく、国会図書館でもマンガはすべて保存されていないし、保存されているマンガもすべてカバーが取り外されているらしい。
基本的に国会図書館に集まっているのは、出版社が自主的に送るシステムらしく、送ってないものは当たり前のように保管されてないってことです。
ましてや、同人誌などは問題外ってこと。
だから同人誌や絶版になったマンガは今、ボランティアグループが収集し、自分たちがお金を出し合って倉庫を借り保存しているとか。
なので、国や自治体はこれらペイしない保存をやってほしいと言うのです。

好きなものばかりを集めるコレクションではなく、網羅して集めることが重要なのです。

そのモノの価値が定まらないものにお金をかけることが最も苦手なのが日本でしょう。
浮世絵など、海外で評価されてはじめてその価値に気付くのですよ。
藝大の藤幡さんが言ってました。「藝大には、浮世絵も漫画も教える人はいない」と。

同時代に発生しているマンガを収集し分類して後生に残すこと。
50年、100年経ったときに重要な資料となることを信じて森川さんの図書館づくりが始まっています。

応援したいですねえ。