とんでもない番組を見ました... 

昨日夜中に目が覚めて、眠れそうもなかったのでテレビをつけた。

NHKにチャンネルを合わせると(もはやチャンネルではないが)
「オォ、これは見たかった番組の再放送ではないか」と分かり、眠気も吹っ飛び見てしまいました。

それはワンダー×ワンダーで放送された「世界記憶力選手権」の特集。

毎年12月に開催されているもので、1991年に始まった選手権らしい。
イギリス発祥の協議会でその種目たるや大変なもの。
3日間で10種目の競技を行い世界一の座を争う。

たとえば2400にも及ぶ数字の羅列を1時間かけて記憶し、2時間かけて記入する。
たとえば480もの数字の羅列を5分で記憶し、10分で書くとか、たとえば架空の歴史の出来事と年代を覚え、年代順をぐちゃぐちゃにされた出来事だけの表示に年代を記入していくとか。
英語で読み上げられる数百の数字を聞いて記憶し書いていくとか。
最後の種目はバラバラにされたトランプ1組の並びをできるだけ速く記憶した者が手を挙げ、別のバラバラにされたトランプを並べ直し、出題者が持った正解のトランプと順番を合わせていく。

1つでも順番を間違えれば得点は0点。
そんな出題に世界各国から記憶力の天才たちが集まってくるのだ。
 
そして、今回注目されたのが、中国勢の圧倒的な強さ!

開始以来8度も優勝し続けてきたチャンピオンはランク外となり、ワン・フェンという中国人が世界記録をいくつも樹立して優勝を遂げました。

そこで紹介されたのが、中国国内でブームになっている記憶力活性化の塾。

各地方にあり、そこに通う子どもたちがめきめきと学力を伸ばしてさらに注目を浴びているらしい。
夏期合宿もあり、子どもたち1人にかかる1週間の費用が、その地方の平均月収の3倍。
平均月収が4万円で、合宿費用13万円。
そんなところにわんさと通っているのですよ。

いわゆる記憶力のコーチング。
数字も英単語もイメージに変換してストーリーを組み立て覚えていくというもの。
 
ちなみに優勝したワンさんは2400もの数字の羅列をほとんど覚えており、480の数字の羅列はパーフェクトでした。
これは世界記録。

ゲストの茂木健一郎が、出題者の予想を遙かに超える記憶力だったのだとコメントしてました。

この2400に及ぶ数字の羅列種目で中国勢がベスト3を独占しました。

ついでにワンさん、英語で読まれる数字を中国語に翻訳してストーリーを組み立てるには時間がかかりすぎるので、英語をそのままイメージに変換しストーリーを組み立てられるように1年間かけて訓練したそうです。
最後のトランプ記憶にかかったワンさんの時間は22秒でした。
 
2位になったのはドイツで全身の筋肉が衰えていく難病と闘っているヨハンス・マロー氏。
筋肉は衰えていくので、せめて脳だけは鍛えたいと記憶力トレーニングに励んでいるのです。

残念ながら日本人の紹介はまったくなし。
でも、2005年から記憶力日本選手権が始まっているらしいので優勝者は世界大会に出場しているはず。

もう一人のゲスト、アグネス・チャンが言っていました、
「中国人は子どもの教育と食べ物にはお金をかけます。この2つだけは体に入っていくもの。誰も取り上げることができないから」。

中国らしいコトバですよね。

アカデミー賞受賞「英国王のスピーチ」に見る才能の集結

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「金閣寺」の溝口も吃音で悩んでいたが、もう一人、海を越えて悩んでいたのが英国のジョージ6世、現エリザベス女王のお父さんです。

兄エドワード8世の「王冠を賭けた恋い」ばかりが注目されていて、陰に隠れ目立たない存在だった弟が主人公。
この人がいたので、現在も英国王室は庶民に愛されている存在になっているといわれています。

幼い頃の精神的なトラウマが彼を吃音にしていたのですが、演じているのはコリン・ファース。
「ブリジット・ジョーンズの日記」や「ラブ・アクチュアリー」などラブコメでまじめな役を演じていましたが、その持ち味を残したまま英国王を演じているのがすごい!

監督のトム・フーパーはまだ38歳、自分でもコメディが好き!と言ってました。
でもコメディの裏にあるシリアスな面を描くのが英国の持ち味であり、深みなのです。

なんと、この役、最初はヒュー・グラントに依頼があったそうですが、断られてコリン・ファースのところにきたそうです。
今頃はヒューくん、地団駄踏んでいることでしょうねえ。

妻のエリザベスを演じるのは実生活でティム・バートンのパートナーでもある「アリス・イン・ワンダーランド」のヘレナ・ボナム・カーター。
献身的に夫を助けますが、それが明るいところが良い!
また吃音を治療するスピーチ矯正専門家をジェフリー・ラッシュがこれまた上手い!

ほとんどこの3人のドラマですが、笑いながら泣きながら2時間の上映時間はあっという間です。

監督も役者も脚本も美術も衣装も音楽も素晴らしい!

トム・フーパーという若き才能に集まった才能の集結が見事な作品になりました。
アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞の4冠は納得です。

なぜか今、三島由紀夫。そして「金閣寺」。

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恐るべし!宮本亜門!!恐るべし!森田剛!! 

神奈川芸術劇場(KAAT)のこけら落とし公演であるこの舞台「金閣寺」。
キャナルシティ劇場での公演を見に行き、演出のすごさと主人公・溝口になりきった森田くんに驚きました。
森田くんは亜門さんのご指名による出演です。

演出は、KAATの初代芸術監督を務めている宮本亜門さん。

昨年、亜門さんにインタビューする機会があり「金閣寺」を選んだ理由をお聞きしたとき、亜門さんが言われたのは
「いつも海外で公演するときに、劇場関係者に言われるのは...なぜ日本人は翻訳物が好きなのか。
自分たちが見たいのは日本的なもの、日本人じゃないと演れないものをやらないのか?ということ。
だから、日本的なこの作品をやってみようと思った」
とか。

その思いは見事にこの舞台に結実しとりました。

吃音のために外界との扉を閉ざし、コンプレックスの塊である溝口、
どこまでも素直に伸びやかな、誰からも好かれる性格の鶴川(大東俊介)、
足が不自由であるにも関わらずまったくそれを意に介さず、逆にそのハンディを利用して器用に生きる柏木(高岡蒼甫)。
この青年たちの微妙な関係にフォーカスした舞台です。

20分の休憩をはさんで3時間の舞台ですが、森田くんはほとんど舞台に出てしゃべっています。
恐るべし!でしょ?

でも今回最も注目すべきはやっぱり演出!

劇場関係者いわく、照明チェックに2日間かかったそうですが、照明だけではなく、舞台セットも美術も音楽もすべてが計算されつくしたもの。
舞台装置は学校にある椅子と机、それが道となり壁になり、階段になるなどあらゆる場面に変化します。
その動かし方もパフォーマンスであり、かたときも舞台から目が離せない状態です。
そして、亜門さんが「金閣寺」をやれると確信したのが、この舞台に登場する「ホーメイ」という独特の歌唱法で歌う山川冬樹さんという存在がいたことらしい。
金閣寺そのものを象徴する鳳凰という役柄を美しい肉体と声で演じているのですが、この人が出てくると、目は釘付けでした。

いやあ、知りませんでした。
この方もホーメイという歌も。要注目です!

福岡の演劇関係者は「完璧な演出」と絶賛しておりました。同感です!

ダンスのように流麗な身体表現で机や椅子を動かすパフォーマンスを舞踏集団「大駱駝艦」がやっているのですが、彼らを知らない若い女性たちは「あの動かす人たちもカッコ良かったねえ」と噂しておりました。
あれが大駱駝艦たい!と説教しそうになりました。

この舞台を福岡で見ることができただけでも、キャナルシティ劇場ができて良かったと実感しました。

先月は東京で「ミシマダブル」の「サド侯爵夫人」を観劇。

蜷川幸雄演出で少年隊の東山くんと生田斗真くん。これも膨大な台詞量。
しかも「わが友ヒットラー」との2本立て(どちらも三島由紀夫の戯曲)を昼夜行うという信じられない舞台ですよ。

ジャニーズ事務所のメンバーは鍛えられ方が違うってことでしょうかねえ。

そして、価値観が大きく変わろうとするとき、三島由紀夫が注目を浴びるのでしょうか。