「ホン・サンス/恋愛についての4つの考察」つ、ついにホン・サンス映画の時代がやって来た~!

久しぶりにブログを書く気になったちびっこOです。

それはなぜかというと、今週末からKBCシネマでホン・サンス監督の4作品が特集上映されるから。ホン・サンス、最近久々に「外れがないな~」とツボにはまっている韓国人監督です。

 

ホン・サンス作品とのファーストコンタクトは、以前シネ・リーブル博多駅で劇場宣伝をしていた時にあった「韓国新世代」みたいなタイトルの特集上映。その時にデビュー作「豚が井戸に落ちた日」('96年)と2作目は「カンウォンドの恋」(公開時は確か「江原道の力」というタイトルだった)を観たのですが、その時の感想はイマイチ。「豚が井戸に落ちた日」はずっと何も起こらないと思ったら最後にいきなりショッキング(コワっ)だし、「カンウォンドの恋」はモラトリアム青年が、江原道に旅して出会った女の子とウダウダしてるだけだし。作品の評価は高いけど、正直「あんまり趣味じゃないな」と思ってたのですが、その後、見た「秘花~スジョンの愛~」で妙にハマってしまって、今ではすっかりホン・サンス崇拝者です。

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 「豚が井戸に落ちた日」

 

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「秘花~スジョンの愛~」

 

ホン・サンス映画の魅力を一言で表現すると、男女関係のウダウダをウダウダなままに描くこと。恋だの愛だの言ったって、結局は男と女の間はこんなもん的な展開に妙に納得すると同時に園滑稽さが微笑ましくあるのです。男は常に下心があって、女は結局押しに弱い。その衝動を恋と錯覚したり、衝動の後の収拾のために優柔不断な言い訳したり。

しかも主役は常に映画監督が作家。「監督、これはあなたの体験談ですよね?」というネタのオンパレード。きっとそのあたりが、韓国のウディ・アレンと呼ばれる所以なんでしょう。

「韓国のゴダールやエリック・ロメール」という呼び方もありますが、私は断然ウディ・アレンだと思います。毎回同じことをやっているのになぜか飽きない、飽きないどころかお約束がツボにハマる、そういう感じ。

前置きが長くなりましたが、「ホン・サンス/恋愛についての4つの考察」もまさにそんな4本。

ホン・サンスの常連俳優キム・テウにキム・サンギョン、ユ・ジュンサンに加え、テレビではしっかり癒し系のイケメンで通っているイ・ソンギュンまで、こんなに平凡な男にしちゃう!? 

どれか1本といわず、全部見てその微妙な恋愛のバリエーションを見比べて欲しい特集です。というか1本だけだとホン・サンス映画の面白さを理解できない可能性が大。

ぜひ、もっとたくさんの人にホン・サンス映画の不思議な面白さにハマってもらいたい!と心から願うちびっ子Oでした。

「ホン・サンス/恋愛についての4つの考察」

3月2日(土)よりKBCシネマにて公開

http://www.bitters.co.jp/4kousatsu/

 

 

「よく知りもしないくせに」 2009年/韓国/カラー/126分

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監督・脚本:ホン・サンス 撮影:キム・フンクァン 編集:ハム・ソンウォン

キム・テウ(『JSA』『キッチン~3人のレシピ~』)、
コ・ヒョンジョン(『浜辺の女』)、
オム・ジウォン(『グッド・バッド・ウィアード』)

 

「ハハハ」 2010年/韓国/カラー/116分

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監督・脚本:ホン・サンス 撮影:キム・ヒョング 編集:ハム・ソンウォン

キム・サンギョン(『殺人の追憶』『気まぐれな唇』)
ムン・ソリ(『オアシス』)
ユ・ジュンサン(『黒く濁る村』)
キム・ガンウ(『外事警察』)
イェ・ジウォン(『気まぐれな唇』)

 

 

「教授とわたし、そして映画」 2010年/韓国/カラー/80分 

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監督・脚本:ホン・サンス 撮影:パク・ホンヨル 編集:ハム・ソンウォン

イ・ソンギュン(「コーヒープリンス1号店」)
チョン・ユミ(『甘い人生』)
ムン・ソングン(『冬の小鳥』)

 

 

「次の朝は他人」 2011年/韓国/モノクロ/79分

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 脚本:ホン・サンス 撮影:パク・ヨンヨル、ジ・ヨンジョン 編集:ハム・ソンウォン

ユ・ジュンサン

キム・サンジュン(「私の男の女」)
ソン・ソンミ(『マイ・ボス マイ・ヒーロー』)
キム・ボギョン(『友へ チング』)

釜山映画祭2012レポート 第1弾

釜山映画祭は、2年ぶりに行ってきたんですが、箱も客もプレスもゲストも、ますます規模が大きくなってましたよ。
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メイン会場のセンタムシティの「映画の殿堂」って建物も中には初めて入ったんですが、1年前、映画祭直後に行ったときは、まだ全面オープンしてなくて、「ここで映画祭のオープニングを本当にやったの?」と思うくらい周囲ががらんとしてたんですが、この1年でものすごく周囲が開けてて。
ミュージカル専用劇場とか、よく分からないなアート&カルチャー系の大箱がニョキニョキ建ってました。
夜になると電飾なんかもきれいで、「すげえ、釜山」と驚きました。

映画祭の会場もセンタムシティのシネコン2つ(10スクリーン以上)に、映画の殿堂っていう4000人はいる野外劇場や840人の劇場や、ヘウンデのメガボックスや、もともとの映画祭会場だったナンポドンにも上映会場が復活して、「こんなにたくさんのスクリーンで映画祭やってるの?」ってくらい大規模にやってました。
マーケット用の試写まで合わせると、30スクリーンちかくでやっていたんでは?

ミーハーに韓国スターの登場する野外イベントみたり、美味しいものもをきっちり食べたりしてたんで、映画は1週間で14本くらししか見てないんですけど、見た中では、韓国のウディ・アレンなんていわれてるホン・サンスの『他の国で』が一番面白かったです。

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「フランス人女性が、韓国の海辺の田舎町にやってきたら」という設定なんですけど、登場人物もセリフもほとんど一緒なのに、3パターンの違うタイプのアンナバージョンによって、少しずつニュアンスや展開が変わっていくんですよ。
中でも、英語しゃべれないのに、なんとかアンナと仲良くなろうとするライフセーバーのキャラがバカ受け。
特に英語圏の海外のゲストや観客にも大うけでしたよ。

あとは、『グエムル』の興行記録を塗り替えて韓国の興行歴代記録を更新中の『泥棒たち』とか、ホ・ジノ監督の最新作でチャン・ドンゴン、チャン・ツィー、セシリア・チャン主演の上海版『危険な関係』もみました。

『泥棒たち』はハリウッドもびっくりな洒落たアクションで、こりゃ、ヒットするな、って感じでした。
またしても、ハリウッド・リメイクされそう。

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久々に、チョン・ジヒョンも当たり役だったし、
キム・ヘスは抜群に美しいし、
『チェイサー』のキム・ユンシクは渋いし、
「ドリーム・ハイ」のキム・スヒョン(この子は、今韓国でもっとも注目されてる若手俳優らしい)と、
次から次に凄い役者が出てきて、韓国映画ファンには悶絶って感じのエンタメ作品。

この作品なら、韓流映画のレッテルや足かせから逃れて、日本でも映画としてちゃんと興行できるんじゃないかな~と思うんですが、どうでしょう? 
ワーナーくらいが配給するのかな?

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→『危険な関係』舞台挨拶(左からチャン・ツィイー、セシリア・チャン、チャン・ドンゴン)

それからCJが開発したという4DXってのを体験してきましたよ。

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中国・香港映画の『太極0(tai chi zero)』をこのシステム用に加工したデモンストレーション版。
3D+シーンや効果音に合わせてイスが揺たり、座イスの頭の左右から風がプシっと拭いてきたり、背中に衝撃を感じるような仕掛けがしてあったり、雨のシーンではミストで水がプシュッと顔に当たったりと、まあ、ビックマウンテン的な劇場システム。
仕組みは面白いけど...内容が面白ければ、もっと楽しめたかな。

私は大丈夫だったんですが、一緒にいっためがねはちょっと乗り物酔い的に気分悪くなってました(笑)
私は、イスに度々揺り起こされながらも、ものすごい頻繁で眠りに落ちちゃってたんですけど。

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→『太極0』舞台挨拶(左から監督とレオン・カーファイ)

あとは、公開されたばかりで、大ヒット中の『クァンへ~~(邦題:王になった男)』がものすごいプロモーションを展開してましたよ。

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ほとんどの劇場はジャックされてるし、映画祭の野外イベントにはあっちにもこっちにも登場してたし、ビョンホンがトム・クルーズばりにファンサービスしてたのに驚きました。
もちろん、日本からやってきたビョン様ファンがお揃いのパーカーを着て大挙して来てて、いたるところで黄色い悲鳴を上げてましたよ。
ちなみにビョン様にはオープニングの夜、パラダイスホテルのロビーで偶然遭遇しました。

それと、「宮(クン) Love in palace」のチュ・ジフンがいきなりバンド結成してて、こちらにも日本ファンクラブが100人くらいツアーでやってきてました。

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チュ・ジフン結構好きなんで、私もはじめ"きゃ~"ってなってたんですけど、正直、バンドより俳優がいいなって思いました(笑)

最後に、今回映画祭でみた韓国映画を総括して、1つ。

最近の韓国映画(インディペンデント系も商業映画も)、結構なスターの全裸ヌードが流行りのようです。
いろんな映画でデジャヴみたいな全裸の絡みを大スクリーンで見せられて、
「ちょっとはぼかしてもらった方が映画に集中できるんだけど...」と思いました。
いやあ...女優も男優も見事な脱ぎっぷりにビックリです。

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『僕等がいた』

監督:三木孝浩 原作:小畑友紀(小学館「月刊ベツコミ」連載) 脚本:吉田智子
主題歌:Mr.Children 前篇「祈り~涙の軌道」 後篇「pieces」
出演:生田斗真、吉高由里子、高岡蒼佑、本仮屋ユイカ、小松彩夏、江本佑、比嘉愛未、須藤理彩、麻生祐未 
(2012/日本/前篇2時間3分、後篇2時間1分)
配給:東宝 アスミック・エース
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オーバー40女子としては当然なのだが、最近の恋愛少女マンガにはとんと疎い。
とはいえ、少女マンガ的なものにはいくつになってもときめくもの。
だって、別マ(別冊マーガレット)、週マ(週刊マーガレット)で少女時代を過ごした世代なんだもん。

この永遠の少女マンガ魂が、「冬ソナ」に始まる韓流スター(マンガから飛び出してきたような王子ぶり)ブームを起こし、いまや若者層にまで広がるK-pooアイドル人気につながっていると、個人的には踏んでいます。
王道少女マンガ・エッセンスは、老若女子にとって永遠のときめきのツボです!

ということで、いよいよ先週末公開になった前後編2部作連続ロードショーの映画『僕等がいた』

先週の土曜、3月17日よりTOHOシネマズ天神ほかで前編が公開され、「ドラえもん」に次いで週末の興行ランキング堂々の2位。
ミドル・ティーン・エイジャー層が、きちっと劇場に詰め掛けているそうです。
彼らにとっては、そりゃあもう等身大の憧れラブストーリーなんでしょうね...(遠い目)。

で、前編見た人は、なんで後編がすぐ観られないの!!!!?
と、もやもやな気持ちで劇場を後にするに違いない。

というのも、この映画、「そりゃ、前編見たらの速攻後編見たくなるでしょ!」という究極の"つづく"映画なんですから。

ありがたいことに私は、公開前のマスコミ試写でいっきみさせてもらいましたよ。
ありがたや、ありがたや。
1000万部突破の国民的コミックの映画化だから、若い女のコ衆は読んでストーリー知ってるかもしれないけど、読んでない人にとっては、もう前編の後ろについてる予告編が衝撃的。

学年イチのモテ男、矢野(生田斗真)に一目ぼれしたヒロイン、七美(吉高由里子)。
高校生にしてはいろいろワケあり(ヤバイ方じゃありません)の矢野となんだかんだ高校生ならではのすったもんだあった挙句、やっとこ両思い。
そりゃもう17歳にして、人生の絶頂なラブラブシーズンを過ごす2人が、いきなり遠距離。
「離れていても、思いは変わらないよ~」と誓いあって別れるんだけど...。つづく。

まあ、ここまでは想定内なんだけど、その後に続く後編のダイジェストが、
「えーっ、何? その後の一体何が起こって、そうなって、ああなって、こういうことになってんの!!!!!」
と、とにかく予想しがたい怒涛の展開。
それこそ、ビハヒルをワンシーズン飛ばして観た時の衝撃に近いというか、冬ソナを2話とばして見たときの着いていけなさというか。
まあ、とにかく"つづく"心をつかみまくった予告編なわけです。

この予告編を見るだけで、この映画を観る価値がありました(きっぱり)。

もちろん、王道少女マンガの映画化ならではのみどころも満載!

吉高由里子のマンガから飛び出してきたようなヒロインぶりだとか
(どんなときもまっすぐで健気!)
七美と矢野を筆頭に、だれもかれもが気絶しそうなキュン死にキラーフレーズをキメまくるとことか
「これまでのこと、私と逢ったことでプラマイゼロにならないかな」(七美)
「プラマイゼロじゃなくてプラマイプラスだった」(矢野)
 
ひえ~っ!...ぜぇぜぇ。

前編「祈り~涙の軌道」、後編「Pieces」と、ここぞというところに流れるミスチルの主題歌に至っては、青春映画の様式美さえ感じる、堂々の直球ぶり。

生田斗真の学ラン姿...ぎりぎりOK?、
高岡蒼佑の学ラン姿...それは、さすがに...
と、いろいろと突込みを入れながらも、結構楽しめた王道少女マンガの純愛ストーリーの映画化でしたよ。
ときめき不足の女性達は、アンチエイジングとリハビリをかねて観てみてはいかがでしょう?

ちなみに、後編は4月21日(土)~公開。
個人的には、前編をなるべく後編公開近辺にみて、テンションキープなまま後半みるのがオススメです!

ちびっこOのおススメ度 ★★★☆☆

2012ゆうばり国際ファンタスティック映画祭②/2

ここからはプログラムの部門別に、映画祭をレポート!

1 招待作品部門...公開前の話題作を観られる有料試写会的部門
オープニングの『シャーロック・ホームズ』、クロージングの『僕等がいた<前編>』をはじめ『ヘルプ 心がつなぐストーリー』『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』など全10本を上映。オープニング、クロージング以外はすべて2000円のゆうばりファンタパスポート(通し券)で観られるという太っ腹さ。

『作者不詳』 (配給:ソニーピクチャーズ)は、まだ邦題も決まっていない段階でいち早く上映されていたので鑑賞しました。
監督が『インディペンデンス・デイ』や『2012』のローランド・エメリッヒなんで、勝手に宇宙人モノのSFアクションかと思っていたら、なんと16世紀を舞台にしたコスチュームもの。文学界で長年議論が続いている"シェイクスピアの謎"にまつわる歴史ミステリーでした。
主演はリス・エヴァンス!(出世したな~) 
知識的には着いていけないところも多々でしたが、「え~っ、そうなの?(いや、そうかもしれないの?)」と知的好奇心を刺激される大人の文芸エンタテインメント。
見ごたえありましたよ。邦題、何になるのかな? 


2 オフシアター・コンペ部門
"ファンタスティック"をコンセプトに短編、中編、長編の区別なく公募された313本の中からノミネートされた12作品を上映。グランプリを受賞すると、次回作の制作支援が受けられるとともに翌年の映画祭でお披露目されるというシステム。『どんてん生活』の山下敦弘監督や『SRサイタマノラッパー』の入江悠監督もこのコンペのグランプリ出身です。

本年のグランプリ受賞作は、石原貴洋監督の『大阪外道』
残念ながら映画は未見ですが、監督や出演者はパーティで見かけました。タトゥーとかスーツに毛皮な男性陣...見るからにただ者ではない異彩を放ってました。
あっ、これもスカパーで放送...したみたいです。
http://www.sukachan.com/movie/SJ0000074860/


3 特別プログラム&イベント
『息もできない』で注目された女優キム・コッピの特集や、最新作『ゾンビアス』を含めた異色の奇才・井口昇監督特集、ゆうばり映画祭出身で映画祭常連の山口雄大監督最新作『手鼻三吉』など、ホラーからウルトラマン、アニメ、旧作までゆうばりカラーあふれる何でもありの36本。

出来たてホヤホヤのワールドプレミアだった『手鼻三吉』は、夜10時~の上映だったにもかかわらず会場はほぼ満席。ちなみに、山口監督は2003年『地獄甲子園』で本映画祭ヤングコンペ部門のグランプリ獲得。看板役者・坂口拓とは1998年のデビュー作『手鼻三吉』以来の仲なんですね、きっと。

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山口雄大監督(右)とと三吉役の坂口拓

コチラは、デビュー作『手鼻三吉と2(トゥワイス)志郎が往く』
http://www.youtube.com/watch?v=9otxL9ps45Y

坂口拓、若っ!でも、作風は全然変わってない。
三吉シリーズは山口監督&坂口拓のライフワーク的シリーズなのかな?
ゆうばりのファンには、このノリがお約束らしく、超高速4コマ漫画的なスピード感で、ストーリーもタッチもキャラも自由自在にスイッチングしていく三吉(さんきち)ワールドに、会場はドカンドカンの大爆笑。私もあっけに撮られながら笑いました。
そして、ちゃっかり坂口さんに2ショット写真をとってもらったり(赤面)。
配給や公開はまだ未定らしいです。


4 フォアキャスト部門
これは、どういうコンセプトかな...新人監督部門かな?中編・長編合わせて20本を上映。
『サマータイムマシン・ブルース』や『曲がれ!スプーン』の映画化でも注目される京都出身の人気劇団 ヨーロッパ企画の企画短編集とかもやっていたみたいですが、残念ながらこの部門はまるっと見逃しました。ここからコンペ部門に巣立っていくんだろうな。


5 インターナショナル・ショート・フィルム ショウケース部門
いわゆる短編・中編部門ですね。これは「ホラー&スプラッター」、「スリラー」、「ファンタジー」、「ドラマ」4プログラム編成で、会場の1つホテルシューパロの1階で出入り自由の無料上映をしていたので、空き時間に5本ほど観ました。

面白かったのは、『ハトは飛ばない』(韓国・18分)というアニメ。
飛べないばかりに、自分の目の前であっさり他界してしまう父と母。そんなトラウマから夢も希望も捨て、天涯孤独に地上でサバイバルしてきた主人公のハトが、フライドチキンになるのが夢だという純真無垢なニワトリと出会い...。
ほのぼの、おとぼけな絵のテイストとはミスマッチなシニカルな語り口がセンスいいなあ。
http://fanplus.jp/_cinema247_/goods/contents/3907/

私は見逃しちゃったんですが、会う人に「何か面白いのありましたか?」と聞いたら3人くらいからタイトルを聞いたのがコチラ。
「エンカウンターズ」 (監督:飯塚貴士・30分)
Http://www.youtube.com/watch?v=EtXc-tXXYr4
すごいすっとぼけた語り口の人形アニメですね。
バカバカしそうだけど、観てみたい。


他にも、シンポジウム1つと、ゆうばり映画祭の名物らしいストーブパーティに参加しました。

シンポジウム「夢みる子供たちの未来へ 映像教育フォーラム in ゆうばり」
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 前日の夜、偶然居酒屋で『ナビィの恋』の中江裕司監督とばったり会って誘われたので覗いてみたのですが、これがなかなか面白かった。監督とは『ホテル・ハイビスカス』と『真夏の夜の夢』の福岡キャンペーンで2度ご一緒したことがあるんです。

映画や映像制作を取り入れた教育プログラムは最近各地で行われているようで、この日は、中江監督が金沢で講師をした「こども映画教室」で小学生が撮ったドキュメンタリー(なんとテーマは"愛")や、北海道コミュニティシネマ・札幌のワークショップの2011年作品『命の樹』など、子ども達がとった作品3本を観たあとシンポジウム。
中江裕司監督ほか、埼玉の映像ミュージアム SKIPシティのマネージャー、鈴木みどりさん、北海道コミュニティシネマ・札幌の代表で市民出資のミニシアター、シアターキノの代表、中島洋さんなどがパネリストとして参加していて、司会は映画評論家、寺脇研さん。

正直、小中生が撮る映画なんてオママゴトみたいなものかと思っていたら、なかなかどうして。
中江監督の「子どもは面白い映画撮るよ」という言葉の意味が分かりました。

例えば、"愛"をテーマにしたドキュメンタリーでは、小学生が道行くカップルを捕まえては、「2人は恋人同士ですか?」「キスしたことありますか?」「今ここでキスしてください」と大人では考えられないストレートさでカップルたちに迫り、結果、インタビューされたカップルのいろんな関係性(愛の形?)が浮き彫りになるという計算外の面白さ。

札幌のワークショップ作品『命の樹』は市民公募した脚本を元に、中学生達が脚本のなおしから演出、出演、音楽まで手分けして制作した作品。
親に不満ばかりの普通の中学生のもとに、かつて北海道の貧しい開墾時代に懸命に生きていた同じ年頃のぞ先祖様(少女)が現れて...というファンタジックな物語のですが、中学生達の等身大の感性と演技に、ぐんぐんストーリーに引き込まれました。
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こういう制作過程を体験することで、メディアリテラシーとか仕事に対する意識(役割分担)や自分の特性に気づかせていくことが目的なんですって。
年々、高年齢化していく映画ファン層の若返りを図るためにも、こういうプログラムは有効かも。
個人的には、授業に映画鑑賞の時間を取り入れてほしいです。
読書感想文コンクールと同じように映画鑑賞文コンクールとかもあればいいのに。
うん、絶対いいと思う。


最後に、ストーブパーティ。
結構な寒さにも関らず、屋内ではなく野外で行われるんです。
カンパ箱に気持ちのカンパを入れると、紙コップや紙皿をくれて、広場内のいたるところで振舞われているあったかい鍋やジンギスカン、海鮮バーベキューを食べながらストーブを囲むという。
この寒さの中で飲む日本酒の熱燗は最高!(あっという間に冷酒になりますが...)。

そんな中、30歳のイケメン・鈴木直道夕張市長も、映画ファンにまざってストーブを囲んでました。
なんと鈴木市長の名刺をゲット!(オープニングパーティでお会いしたときに)
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いや~、この好青年ぶり、ファンクラブができそう。

ストーブパーティでは、『デビルズ・ロック』の監督を発見。
酔った勢いで話しかけ、好きなホラー映画とかを聞いちゃいました。
ポール・カンピヨン監督は、『ロード・オブ・ザ・リング』などのピーター・ジャクソン作品のVFXにも参加しているそうで、『デビルズ・ロック』(映画はナチもののオカルトホラー)のセクシーな女悪魔のクリーチャーは自分でデザインしたそうです。
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『エクソシスト』や『死霊のはらわた』など70~80年代の正統派ホラーをリスペクトしているそうで、「リング」や「ほの暗い水の底から」などジャパニーズホラーも結構観ているとか。
ホラー好きな私としては、監督の次回作にも期待したいところです。

<ゆうばり国際ファンタスティック映画祭>データ
会期:2012年2月23日(木)~2月27日(月)
上映本数:112本(長編・短編含む)
観客動員数:12577人(昨年12577人、※過去最高は2001年の24983人)

オフシアター・コンペティション受賞結果
☆グランプリ 『大阪外道』 石原貴洋監督
☆審査員特別賞 『くそガキの告白』 鈴木太一監督
☆北海道知事賞 『ビートルズ』 坂下雄一郎監督
☆シネガーアワード 『くそガキの告白』 鈴木太一監督

2012 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 ①/2

2月23日~26日まで、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に言ってきました。
書こう書こうと思いつつ、すでに帰ってきて2週間が経過...(汗)。

ゆうばり映画祭に行くのは、13年ぶりに2度目。
2006年、夕張市の財政破綻で一時はその存続もあやぶまれた中、地元ボランティアと配給関係者、映画ファンの有志が一丸となって回を重ねている映画祭です。
毎年、映画祭に参加しているF女史にずっと誘われていたんですが、今年ついに一身発起して行ってきました。

新千歳空港からバスで1時間15分。
あたりは一面の雪。北海道だからこれくらい当然かと思っていたら、夕張でも今年は10年ぶりくらいの大雪だとか。風が吹くと半端ない寒さでしたが、それ以上にきれいに積もった美しいパウダースノーは美しかったです。
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とはいえ、町は過疎化が進み、かつての繁華街もさびしい感じ。夜になると空き家も目立ち、こんなところで映画祭が続いていること事態が奇跡的と思えるほどでした。
正直、食事やお茶できる店もそう多くはなく、みんな映画祭会場付近の食堂を兼ねたサロンに密集している感じ。おかげで映画祭のゲストにも頻繁に遭遇します。
町のあちこちには、かつて映画館を飾ったあんな作品やこんな作品の看板が。
こういうのを観ながら歩くと、やっぱり夕張はやっぱり映画祭の町だなと感じました。

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空港から直行で、上映開始にぎりぎり間に合ったオープニング作品は、「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」
1作目大好きだったんで、ゆうばりでいち早く観れてラッキー!
当然ながら1作目に輪をかけたスピード感とスケール感で、敵も当然、手ごわくなってはいるんだけど、その辺はエッセンスの1つというか。まあ、冴え渡るホームズの変人ぶりが最大の魅力でした。見所はずばりラストの変装。ロバート・ダウニーJr.扮するホームズ、お茶目すぎる!!

「シャーロック・ホームズ」は中洲大洋、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ほかで公開中!
http://wwws.warnerbros.co.jp/sherlockholmes2/
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2日目は、「黒部の太陽 特別編」からスタート。
1968制作、三船敏郎×石原裕次郎の2大スター共演で、監督は熊井啓という超大作。
黒部渓谷に巨大ダム建設するという世紀の難工事に、不屈の精神で挑んだ男たちの実話を基にした"プロジェクトX"的な映画なのですが、『剣岳』も真っ青な山岳シーンからリアルなトンネル工事のシーンまで、CGなんかなかった時代に、こんな映像よく撮れたな~」と驚くスケールの大きさでした。 だから「映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」という生前の石原裕次郎の遺志もあり、現在もソフト化されていないそう。
全編に垣間見られる高度成長期の日本のイケイケドンドンな社会風潮は、今見ると賛否両論でしょうが、こういう時代を通り過ぎたからこそ今の日本があるんだな、と思える映画でした。ここで観といて良かった。

次に、韓国映画の『探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』を鑑賞。
この作品は、昨年の映画祭のグランプリを受賞したオ・ヨンドゥ監督が、映画祭×スカパーの支援作品として撮った作品。
不勉強な私はそんな予備知識も何もなしに観たのですが、予想以上に面白かったです!今映画祭一番の拾い物でした。
開発中のタイムマシンをめぐり起こる殺人事件と、依頼に来た直後、自分の目の前で事故にあった依頼者の女性。片腕が義手の気のいい探偵ヨンゴンは、やがて彼女がちょっと先の未来からやって来たことを知り、現在のまだ生きている彼女をなんとか事故から助けようとするのです。
なんとも新発想の探偵SFアクション。
出演者も全然知らない人ばっかりだし、(おそらく低予算だと思いますが)お金かけなくても、こんな面白い映画が作れるかという見本みたいな映画でした。
ちなみに、韓国には探偵という職業は存在しないそう。映画のクレジットに『探偵濱マイク』シリーズでおなじみ林海象監督のクレジットを発見。探偵監修とかしてるのか?
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オ・ヨンドゥ監督(左)

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ヨンゴン役を演じたホン・ヨンゴン(右)とヒロイン役のチェ・ソンヒョン

どうやら、スカパーで3月29日に映画オンエアするよう。
観れる環境の方は、チェックしてみてください。
http://www.bs-sptv.com/program/page/000252.html

この上映があった会場、ホワイトロックKIZUNAと名づけられた仮設の球体型シアター。
これがあればどこでも野外上映会ができるな~。今回は、東北の復興支援で特産品の販売や軽食の販売もしてました。
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