阿倍野パウダールーム完成しました / no.d+a

阿倍野Q's mallという再開発系商業施設内にあるパウダールームのアートワークがこの度完成しました。
(Q's mallのオープンは4月26日です http://qs-mall.jp/

この物件は、2009年から動き出していたプロジェクトで、
絵描き淺井裕介を中心に、no.d+a、アラタニウラノ、の3者チームで取り組み、
実に1年半かかりました。
(淺井裕介は、紺屋2023の通路床の作品の作家です)

淺井くんの植物のドローイングに囲まれた「マンゲキョウ」というコンセプトの部屋です。

今回のアートワークは、淺井裕介としても様々な初の試みとなりました。
これまでは、既にある建物や部屋、場所、壁、にドローイングすることが多かったのですが、
今回は内装計画の段階からの参加でした。
インテリアデザインとして、パウダールームという機能を満たしつつ、部屋全体が淺井裕介のアートワークで満たされることを意識し、お互い色々検討・試行錯誤を重ねながら進めました。
全体としては、床に淺井裕介のドローイングが焼かれたタイルが並べられ、壁と天井にはアクリル絵具(淺井くんがアクリル絵具を使うとは!)によるドローイング、鏡にはカッティングシートによるドローイングが描かれています。
それらが映り込み合って増殖するような仕掛けとして鏡が部屋の中央に並んでいます。

ただ、このアートワーク。
部屋の機能がパウダールームということで、4/26のオープン後は男子禁制になってしまい、
男性は見ることが出来ない部屋です。淺井ファンの男性の方は写真にて我慢下さい。

女性の方でご興味のある方はぜひお近くにお立ち寄りの際にご覧下さい。
ポイントカード会員になると入る事ができます

mangekyo01.jpg


アートの力、可能性

昨日仕事で大阪で絵描きの淺井裕介くんと一緒だった。

そこで、年明けから東京都現代美術館で行なっていた彼のワークショップのあるエピソードを聞かせてもらった。

彼は、泥やマスキングテープ、白線シートなどの、日常にある素材を使って絵を描く。
ワークショップでは、マスキングテープによるワークショップを行なったそうだ。
全部で4日間の日程。最終日は震災後だったにも関わらず、全員が参加できたそうだ。
http://d.hatena.ne.jp/asaiyusuke/20110326

その参加者の中に一人の中年の会社員の人がおられた。
この方はこのワークショップに参加したことで、鳥や植物をマスキングテープを使って描く術を知った。
それが思わぬ時に力を発揮した。
それは震災時。
会社に出勤中だったこの方は震災の影響で家に帰れず、会社で一晩過ごしたのだそう。
他の同僚の人たちが、慌て、不安になり、落ち着けずにいる中、
この方はもくもくとマスキングテープで鳥をつくっていたのだそうだ。
そしてそのことで「救われた」「落ち着く事ができた」のだそう。

今東北の人たちが過酷な状況に直面している中、ほとんどの日本人、そしてたくさんの世界の人が、何か自分にもできることはないだろうかと考えている。それはアート業界の人も同じだが、どうしても「アートはこういう時に無力だ」と思ってしまう人が多いそうだ。僕も、なんて建築は無力なんだ、と流されて行く建物を見てむなしくなった。きっとそんな気分なんだ。

災害による被災者の心理的変化には4つの段階があるという記事が先日新聞に載っていた
1「衝撃期(茫然自失の段階)」 目の前で起こった事が信じられず、何もできない失望感の段階
2「蜜月期(ハネムーンの段階)」被災した人同士、または周辺の人たちが、一致団結して立ち向かおうとする段階
3「幻滅期(混乱の段階)」被災者間に格差が出たり、怒りや不満が爆発し、もめ事が起きる段階
4「再建期(復興の段階)」復興にめどが立ち、将来を考える段階

今は2つめの段階だ

しかしいずれ3つめの段階がやってくる。
もしかするとこれがある意味精神的には一番きつい段階なのではないだろうか

確かに1つめと2つめの段階では、アートやデザイン、建築には貢献できる面が少ないかもしれない
災害支援面から見れば、1つめの段階は「消防」「救命」であり、2つめは「避難支援」で、なかなかこれに関わることは難しい。

でも一番きつい3つめの段階には何か役割があるかもしれない。

例えば、避難所の殺風景な壁や天井に、アーティストが絵を描く、とか。
ワークショップなどで子供に楽しい時間を提供する、とか。
小さな演奏会を開く、とか。

今日紺屋のギャラリーでは、ライブペイントが行なわれた
現在開催中の「エイブルアート展」の企画だ。
エイブルアートは障害のある人たちによるアート
本当はもっと色々意味があるが、簡単に言うとそういうアートだ。
http://konya2008-2014.travelers-project.info/konya-gallery/2011/02/life-map--draw-the-line-.html
今日は本田さんというアトリエブラヴォに所属する作家さんのライブペイントだった。
彼は13時から16時まで、ただただ無心で描いていた。

その姿は、何か見ていて力を与えられている気がした。
特に「無心」であることが姿からよく伝わって来て、無心になることの難しさ、そして大切さを思い出さされた。今の自分にも足りていない心のあるべき状態だ。
出来った絵もさることながら、その描く姿に小さな感動を覚えた。

避難所の大きな壁に、たくさんのアーティストがライブペイントをしたら、その姿と絵がどんなに人の心を救うだろう
被災者の人々がみな思い思いにマスキングテープで鳥や植物をつくったら、どんなに心が解放されるだろう

ふとそう思った。

アートの力、可能性

それは凄いのではないか。

そしてもうすぐやってくる3つめの段階でこそ、その力は発揮されるのではないか
生命と肉体の安全が確保された次は、心の救助を文化がするべきなのではないか

もちろん簡単は話ではない。所詮現場を分かっていない者の戯言に過ぎない。
でもそう本当に心から思ったのだ。

from I-phone

感想『ロボットとは何か』(石黒浩 著) / no.d+a

『ロボットとは何か』(石黒浩著 講談社現代新書)を拝読

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人はなぜ生きているのか どこに向かっているのか

最近漠然と考えてしまう事がなぜか増えてきた

経済原理以外の有効な、全ての人が共有できる原理はなかなか見出せない今の時代を感じると、
だいたいそもそも人間はなぜ生きているんだろう、と自然に考えてしまうからなのかもしれない

どこからやってきて、どこへいくのか
何かの目的があるのか そもそも終わりはあるのか
しかし終わりのないものなどあるのか
なぜこれほど複雑な構造をもった生物が存在する必要があるのか

疑問はつきない

僕の足りない頭と経験では、まったく見えない

でも、この疑問は別に僕だけのものではなく、
人にとっての永遠の大きな疑問だ
もしかすると実は人間はこの疑問を抱き続けるようにしかプログラムされていないのかもしれない

しかし実際はこの疑問に正面から取り組んでいる人はそれほど多くないのではないか
答えが出ないかもしれないことに取り組むことはつらいことだし、
先の見えない難問に取り組みむことを生業にして今の社会で生活するのは簡単なことではないと思う

でもこの本の著者である石黒浩氏はそれに真っ向から取りんでおられる
そう思った

この本は、題名は「ロボットとは何か」だが、実際は「人とは何か」について書かれていると感じた

しかもロボット研究という社会的意義と需要がある分野の研究を通して取り組んでおられるので、
まさにこの永遠の疑問に取り組むことを生業とされている

その上、現実社会と切り離されていないし、一部の研究者や業界・分野の間でしか成立しない話で終っていない。
むしろ日常生活との距離をかなり近く感じる研究と実践で、色々ある経済学研究や政治学研究、または、種々の工学研究なんかより、現実的にも意義が凄く高いように感じた
いわゆる重箱の隅を突く研究とは完全に一線を画してる
いわば、本当の意味での「研究」という仕事の社会的役割を果たされているように思えた

ロボットを限りなく人間に近づけようとする過程で、
哲学・芸術・心理学・社会学と幅広い分野を横断し思考されていて、
それらを含めて工学研究されている

もちろん読者に気を遣ってそうされていると思うが、
工学的な専門用語はほとんど出て来ないで、分かり易い言葉だけで説明されているのは、
その辺のそうした他分野と連携・連動されながら研究しておられる日頃の思考も影響しているのではないかと思う

だから哲学書を読んだ後のような、なんとも言えない、ますます疑問が深まるばかりの気持ちではなく、
なぜか、疑問は全然解消されていないのに、読み終えると清々しい気分にさえなってしまった

と同時に、この人答え出してしまはるうんちゃうやろか、とさえ思えた

そして、仮に石黒さんご自身は答えにたどり着けなくても、
石黒浩さんという「人」を研究することがそのまま、人とは何か、の研究になってしまう気さえした

とにかく面白い著書と著者

ちなみに8月にある紺屋サマースクール2011の特別講師をして頂く予定
今からむちゃくちゃ楽しみだ
(だからいい風に書いているのではけしてありません)









福岡市都市景観賞2010を受賞しました

この度、紺屋2023で福岡市都市景観賞2010を受賞致しました。

正直まさかの受賞でびっくりしております。

福岡市都市景観賞は今年で既にもう24回目の伝統ある賞。
これまでに様々な建築物や景観が100件以上受賞しておられます。

この賞は、市民からの推薦によって選考対象作品が選ばれ、
その後審査委員会によって受賞物件が決まります。
今年は約160件の中から8件が選ばれたそうです。

この推薦ですが、他薦以外に自薦も認められているのですが、
ありがたいことに紺屋2023は他薦でして、僕らが知らないうちに応募されていて、
一次審査を通過しましたの御知らせで知ったほどです。

正直最初は、いわゆる都市景観には貢献していないと思うのだけど・・・・・・
といった半信半疑な状態で、まあ駄目だろうと思っていたら、
なんと受賞してしまいました。

受賞理由が、
建物と人々の活動が一体化することで生まれたこの画期的な場を、新たな「景観」の概念として捉えた
ということでした。

これまで、人と物の入っていないのが最も良い状態、というのが建築写真や建築空間の常識だった中で、それに対してずっと疑問を持っていた者としては、まさに人と物があっての受賞ということは、
大変嬉しい限りです。

人があっての景観。
そう思いますので、これからもこういった受賞作品が増えることを期待したいと思います。

そして、今回の受賞は何より「人々」のおかげです。
いつも紺屋に関わって頂いている方々、利用して頂いている方々、お越し頂いている方々に、
この場をお借りして、心より御礼申し上げます。

野田 恒雄

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アーバンデザイン賞2010を頂きました

この度アーバンデザイン賞2010を頂戴しました。

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アーバンデザイン賞とは、建築や都市計画の研究者の方々によって構成されるアーバンデザイン研究体が毎年独自に選出して贈られる賞です。
※アーバンデザイン研究体:http://www.udmovement.com/
毎年研究体構成メンバーの方から推薦があり、理事等の方々によって選考してえらばれるもので、
今回は22件の推薦の中から4件が選ばれ、そのうちの1つに選んで頂きました。

今回は、冷泉荘・紺屋2023等ビルの再生プロジェクト、として、これまでのトラベラーズプロジェクトによる活動が評価され、頂く事となりました。

この場をお借りして、これまで様々なかたちでプロジェクトに関わって下さった方々、そしていつも恊働しているTRAVEL FRONTのメンバーに、心より感謝申し上げます。

今年度僕らの他は、東京R不動産、大阪のから堀倶楽部、柏の葉アーバンデザインセンター、の方々が選ばれておられます。
※授賞式の様子:http://udmovement.exblog.jp/11915324/
またこれまでにも、槇文彦氏・隈研吾氏・妹島和世氏、そして昨年は大学時代の恩師である小泉雅生先生など、蒼々たる顔ぶれの方々が受賞しておられ、大変身の引き締まる思いです。

これからの方々の名に恥じぬ様、そして、このアーバンデザイン賞の名に恥じぬ様、
これからも精進して参りますので、今後ともご指導・ご鞭撻のほど、なにとぞよろしくお願いします。

野田 恒雄
TRAVEL FRONT(TRAVELERS PROJECT事務局) 主宰
/number of design and architecture 代表