掘り出し物を見つけに通っています。

今のささやかな楽しみは、毎日昼休みに「TSUTAYA福岡ビル店」に通って掘り出し物を見つけることです。

本日の収穫は「デラックスカラーシネアルバム イギリスの貴公子たち」
サブタイトルがすごいです、「誇り高き魔性の麗人」ですから。

1988年に芳賀書店から発行されています。
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目次を見ると

ダニエル・デイ・ルイス―その性的アッピール  (これは長沢節さんが書いています)
世紀末美男スターの系譜・ヴァレンティノからダニエル・デイ・ルイスへ
ダニエル・デイ・ルイスは崇高なエイリアンだ!!
その後の"モーリス"たち
イギリス型美青年の条件
ブリティッシュ・フィルム・ナウ
英国貴公子語録
イギリスの貴公子たち・フィルモグラフィー

ダニエル・デイ・ルイスをはじめ、「モーリス」のヒュー・グラント、ルパート・グレイヴズ、ジェイムズ・ウィルビィ、「英国王のスピーチ」とはまるで別人の「アナザー・カントリー」のコリン・ファース、ルパート・エヴェレットたちが、美しい写真とともに紹介されていました!

見ているだけでも幸せになれる雑誌です。

映画も見たくなりましたなあ。

糸井重里という人...

1948年生まれというから、いわゆる団塊の世代の人。
昔なら西武デパートの名コピーライターとして有名だけど、私が面白いなあと思い始めたのはパルコ出版が作っていた「ビックリハウス」の読者投稿ページ「ヘンタイよいこ新聞」です。

「シティ情報ふくおか」の創刊のころ、ちなみに創刊は1976年(福岡に天神地下街ができ、天神コアもできた頃)「シティ情報ふくおか」は父なる「ぴあ」母なる「ビックリハウス」と言ってました。

つまり、情報ページは「ぴあ」に習い、読者ページは「ビックリハウス」を参考にしておったとです。

私自身は「ぴあ」よりも「ビックリハウス」を隈なく読んでおりました。
そしてパルコというところに憧れ、西武というグループ会社に注目し、渋谷の街が若者の街に変わっていくのを福岡の地から遠く眺めておりました。流通と媒体と街がこんなふうに融合していくのだなと。
ま、こんな話はまたいずれ。

今回は糸井さんの話です。

「ヘンタイよいこ新聞」の前には沢田研二の「TOKIO」を作詞し、矢沢永吉の自伝本「成りあがり」の構成・編集を手がけ、スナックなどの飲み屋で自慢げにマッチやナプキンを使って披露する芸をまとめた「スナック芸大全」をまとめ、NHK教育では「YOU」という若者番組の司会をしてました。

そして1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」なるサイトをスタートさせました。

そう、糸井重里は時代とともに歩いている人だと思うんです。
たぶんそれは、糸井さん自身の興味対象が時代とともに変わってきてるからでしょう。

すごいのはそれを仕事にしていること!

「ほぼ日刊イトイ新聞」は1日の総ページビューが約140万という有名サイトです。
ここから「ほぼ日手帳」とか土鍋とか料理本とかいろいろなオリジナル商品が生まれています。  

私も毎日サイトを開いている一人ですが、何よりも読み物が面白い
執筆者や対談相手も多彩。
タモリ矢沢永吉鶴瓶さんイチロー明石家さんまから谷川俊太郎天海祐希市川染五郎などなど。

シリーズ連載がこれまた毎日チェックしたくなるような見せ方と文章なんです。
要はとても優れた編集者と聞き手、ライターがいる編集プロダクションの成せる技なんですね。
文字ばかりでなく写真やイラストが有効に使われ、対談形式も思わず読んでしまう構成です。
バックナンバーがすべて読めるのでチェックしてお気に入りを見つけてください。

おすすめは「われら、ほぼ日感劇団。」
この1回目は劇団・新感線の「朧の森に棲む鬼」ですから。
市川染五郎と糸井さんが対談していて、それはDVDの副音声になっています。

それから「社長に学べ!」シリーズ
任天堂やTSUTAYAの社長など、糸井さんが気になっている社長との対談。

そしてそしておすすめは、荒俣宏さんの「めくるめく愛書家の世界」。
荒俣さんは大の古書好きで知られていますが、それは半端な古書じゃないことがこれを読むと分かります。

今連載中の太田和彦プラス大沢在昌 居酒屋幼稚園」、これ笑えます。
居酒屋探訪家の太田さんのマニアともいえる大沢さんが居酒屋の指南を受けるわけです。
六本木のクラブには一人で行ける大沢さんがなぜか、居酒屋には一人で行けないと。

どんな雑誌よりも今、チェックすべきはこのサイトです。
先日の「BRUTUS」では全編、糸井重里特集でした。

気になる人は多いんですよ。

あの「家族」にまた会いたかった!

4月16日土曜日、北九州芸術劇場で行われる話題の舞台「焼肉ドラゴン」を見に行きました。

この舞台、2008年に東京・ソウルで上演され、どちらの国でもで毎回スタンディング・オベーションとなる熱狂的な反応で迎えられた舞台です。
その年の演劇賞を総なめにした話題作でもあり、東京で今年再演されると聞いて、2月に新国立劇場にも見に行きました。

1970年開催の大阪万博に合わせ、急ピッチで開発された1969~71年の関西の地方都市が舞台。
国有地を不法占拠する在日韓国人集落が立ち退きを迫られる物語でもあります。
一生懸命働いているのに貧しい、でも家族や近所の付き合いが人間くさい時代のありふれた風景が消えてゆく様子が描かれます。
在日韓国人の家族がモデルではありますが、日本人も同じような貧しさの中で明るく懸命に生きていた時代だからこそ、見ていて懐かしい気持ちになるのです。

なんといっても、お父さん、お母さんも演じる役者の存在感がすごい!
演じるのは韓国人の申哲振、高秀喜さん。

作・演出は在日3世の鄭義信(チョン・ウィシン/てい よしのぶ)さん。
映画「血と骨」「月はどっちに出ている」などで在日を描いています。

舞台のあと、アフタートークで出演されました。
国有地からの立ち退きは、兵庫県姫路市の実家の体験が元にあるとか。
実際に万博で消えていった集落も取材したそうです。
「1970年前後は、日本の共同体そのものが崩壊を始めた時代。万博が日本のターニングポイントだったと思う」
と語っていました。
新国立劇場とソウルの「芸術の殿堂」という日韓の国立劇場が制作する舞台ですが、そんな立派な劇場を焼肉の匂いでいっぱいにしたかったとも。

いまや、堤 真一&草彅 剛の二人舞台「K2」などの演出家としても知られる千葉哲也さんが、在日の問題を一人で抱え込む青年として出演。

開演前に会場に入ると、もうそこでは舞台が始まっています。
韓国の音楽を演奏しながらホルモン焼きの臭いが漂っています。

"語り部"である一人息子・時生(トキオ)が、最初と最後、屋根の上から思いを伝えるのですが、これに泣かされました。
最初と最後、時生が語るときに桜の花びらが舞台に散ってくるのですが、これがまた美しくて哀しいのです。

ちょうど、桜散るこの季節に、またこの家族に出会えて嬉しかったなあ。

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これが舞台となった焼肉ドラゴン。ホルモンの臭いがしてきます。(模型)

めがねブログはじめます

『ラーメン侍』の製作宣伝と並行してやってきた、『奇跡』のキャンペーンが、やっとこさ終わりました。

この2作は、いわゆる"ご当地映画"と呼ばれるものです。
『ラーメン侍』は"『ラーメン侍』10.22公開までの道"でも書いてますが、福岡・久留米で撮影された福岡を舞台にした映画。
一方『奇跡』は九州新幹線全線開業をモチーフに、福岡・熊本・鹿児島を中心に撮影された九州を舞台にした映画です。

地元で撮影された映画は、当然興行的にも一番成功しなければいけないとされているので、当の"ご当地"ではプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、まさに死に物狂いの宣伝攻防が繰り広げられます。
つまり宣伝マンとしては、一番体力、気力を吸い取られ、しまいには息も絶え絶えになるのが"ご当地映画"なのです。

思えば、福岡ギャガさんとは懐かしのご当地映画『ロッカーズ』からのお付き合い。
10年たった今でも、「あの『ロッカーズ』の時は...」と例をひきたくなるくらい、ご当地映画宣伝のノウハウを勉強させてもらった先輩的配給です。

『奇跡』はご当地映画なうえに是枝裕和監督の最新作で、九州新幹線全線開業という実際の一大トピックスが絡んでいる作品。
公開直前の宣伝活動の肝になる福岡キャンペーンのお手伝いをさせていただいたのですが、果たしてお役に立てたかどうか(汗)

ともあれ良い映画なので、是非ヒットしてほしいと願ってます。
6月4日(土)から九州先行上映(6月11日~全国ロードショー)です。
皆様、是非劇場に足をお運びください。

ということで、そのキャンペーンを終えたばかりのヨロヨロした体で、舞台『焼肉ドラゴン』を北九州まで見に行ってきました。
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2008年に上演され数々の演劇賞を総なめ。高度成長期の日本を舞台にした、在日コリアンの家族の物語です。
演劇にさほど詳しくないめがねでも、超話題作だと言う事と映画界でも脚本家として知られる鄭義信作品だと言うだけで期待度MAX。

鄭義信さんは、崔洋一監督の『月はどっちに出ている』、『血と骨』、平山秀幸監督の『愛を乞うひと』、そしてプロジェで宣伝させていただいたご当地映画『信さん・炭坑町のセレナーデ』と素晴らしい脚本を数多く作った人です。

めがねの実家の近くには朝鮮学校があって、チョゴリで登校する女の子を日常見かけていました。しかし同じ地元の学校同士とはいえ交流もなく、というよりしょっちゅう学校の不良たちと諍いを起こす朝鮮学校はなんとなく怖い存在。

その後、大人になって『パッチギ!』を宣伝し、韓流ドラマきっかけで韓国を良く知るようになった事もあって、やっと在日問題を意識し、本や映画で知る機会も増えました。それで、基礎的な歴史だけはなんとなく分かったような気でいましたが、舞台で生き生きと生活する家族の物語にどっぷり浸りながら、"知識"だけでは分からない生身の人間の悲哀と生き様に、とにかく圧倒されたのでした。

身を寄せ合うように立っているバラック。
頭上をひっきりなしに行き交い、神経をかき乱される飛行機のブーンという音。
長屋の共同水場でかしましく世間話するおばちゃんたち。
どぶの臭いと焼肉を焼くいい匂いが混然とする中、韓国語が飛び交う騒がしくエネルギッシュな在日コリアンの家族の日常が繰り広げられます。
時は高度成長期で、諸外国に追い付き追い越せと日本中が沸きかえる中、在日という理由でまともな仕事につけない大人が昼間から酒をくらってごろごろしている"焼肉ドラゴン"。
家族は、太平洋戦争で片腕を失った父親・ヨンギル、
働き者で家族の中心的存在でもある母親・ヨンスン、
そして父親の先妻との間にできた2人の娘
足に大きな傷を持つ長女の静花と静花の元彼氏・哲男と結婚した次女の梨花、
母親の連れ子で歌手を目指す三女の美花、
そしてヨンギルとヨンスンの間にできた私立高校に通う長男の時生。

この1つの家族の歴史を追いながら、2世代間にわたる在日の歴史が縮図のように描かれていきます。

本当に素晴らしかった!

終わっても涙が止まらなかったです。
在日コリアンの話だけど、「その歴史をほとんど知らない韓国でも、彼らを差別してきた日本でも共感と感動を呼んだ」というのも納得です。

これは<家族>の物語。

家族が離れ離れになる時、オモニがみんなに言った「どこにいても家族だから」という台詞が重く響きます。

ところで、パンフレットの鄭義信さんのこのコメントが意外でした。
「歴史認識が芸術の核となっていた韓国でも、近年は個人主義への傾倒が著しくて。血縁で結ばれた同心円状に広がる社会だったのに、その構造すら崩れつつあるんです。だから日本ではある種の懐かしさ含め、上の年齢層の観客を中心に受け入れられた『焼肉ドラゴン』が、韓国では若い人たちが『目の前で壊れつつある自分の家族の物語』として強く共感をもってくれた。」
韓国を少し知ると、彼らが自分の家族や仲間を大切にする民族で、いかにその絆が社会で細かく繋がっているかを感じますが、現代ではそれも少しずつ変化してきているんですね。

そうそう!
始まる前にろくにキャストも確認していなかったので、実際に舞台を見て、出演している役者にびっくりでした。
アボジ(お父さん)役にシン・チョルジン、オモニ(お母さん)役にコ・スヒ!
...ちょっとマニアックに韓国映画を知っている人なら、名前は知らなくても顔を見れば「ああ!」となる役者です。
日本の役者も良かったけど、とにかくこの韓国の俳優陣のうまさに舌をまきました。

韓国映画を見始めて知ったんですが、韓国には「ザ・職業俳優」って感じの演技がうますぎる俳優がわんさかいるんです。
ちなみにめがねはチェ・ミンシクのファン。キャッ☆

タイトルだけ決めて、あまりに長く(準備中)のままにしてきた「めがねブログ」。
いきなり舞台の事を書いちゃいましたが、本当は趣味の宝塚と読書のことを書こうと思ってます。
つーことで無理やりですが、在日コリアン、日本人、韓国人交えての映画作りのドタバタを面白おかしく描いたこちらの本。
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梁石日の「シネマ・シネマ・シネマ」がお勧めです。
鄭義信はもちろん、在日の交友関係ってこんな風につながっていて、あの映画ってこうやって作られたんだなーって、映画が2倍楽しめると思いますよ。


『ベンダ・ビリリ!』上映会の御礼

『ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』の上映会にお越しいただいた皆様ありがとうございました!

お客様への御礼の言葉を選んでいるうちに思わぬ時間がたってしまいました。

まず上映会前に起こった東日本大震災の事から。
大地震が起きた事をラジオで聞き、慌ててテレビをつけました。
最初の混乱、続く大津波、千葉の石油コンビナートの大爆発...まるで映画かと思うほど現実感のない凄まじい映像の連続に、しばし呆然としました。
しばらくして東京の配給会社から地震による東京都心の機能停止情報が続々入り、もう仕事どころではなく「日本はどうなるんだ...」という不安の中、祈るような気持ちでテレビを見続けました。

そして日々被害の状況があきらかになる中、何本もの映画の上映自粛、延期が決定。

映画を上映するはずだった映画館はもちろん、広告が中止になるメディアやその対応をする代理店に至るまで、とにかく現場は大混乱。
プロジェが関わる作品も2本公開延期が決定。一方で製作宣伝をしている『ラーメン侍』は久留米で撮影中で、出演者が現場入りできなくなったり、予定していたロケ取材を中止せざるを得なくなるなど、事態収拾にてんやわんやでした。

そんな中、今"映画に出来る事"、今"映画を宣伝する意味"を何度も考えました。

作品によっては上映会自体中止していたかもしれません。
でもこの『ベンダ・ビリリ!』は、今やる意義があると信じて実施しました。

「来るかどうか迷ったけど来てよかった」

「今苦しんでいる東北の方たちにこそ見せたい映画ね」

お客様にそう言っていただけて、私たちもたくさん勇気をもらいました。
足を運んでくださったお客様、トークゲストの皆様、サポートしてくださったスタッフの方全てに感謝しています。

これからも映画の可能性を信じ、日々精進してまいりたいと思います。

改めましてこの度の東日本大震災により被災された皆様にお見舞い申し上げます。
個人としてできることはもちろん、仕事を通してできることを模索しながら、1日も早く皆様が元気を取り戻せるよう心からお祈りしております。
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