河出文庫30周年のキャンペーンは要注目!

昼休みの楽しみは職場近くの本屋さんをぐるぐる回ること。
以前は丸善さんもありましたが、JR博多シティに移転されましたので、
もう1つの巨大書店・ジュンク堂さんにお邪魔しています。
でもこの二つの書店は統合されたんですよね。
だから丸善&ジュンク堂書店です。

ネットで本を買うのも良いですが、書店めぐりで楽しいのは思いがけない本に出会えることです。
今日もそうでした。
思いがけないといいうよりは、懐かしい本たちだったんですけど。
文庫が並ぶ棚に特集してあったのが、河出書房の文庫。

河出文庫30周年記念キャンペーンだそうです。
「30周年に掲げたキャッチフレーズは、
読み継げば、どこへだって行ける」。
知的好奇心に満ちた電車に乗り、ジャンルを超えてどこまでも旅を続けられる――
そんな文庫を目指します。
皆さんもぜひ河出文庫という切符を手に、新しい旅に出かけてみてください。

その中に私の青春時代に読みふけったものがありました。
澁澤龍彦の著書たちです。
唐十郎状況劇場寺山修司天井桟敷などにはまっていた頃、その周りには澁澤龍彦の名前がありました。
澁澤の手にかかると、善と悪、天使と怪物、普通の人と奇人、太陽と月...
どちらが魅力的かといえば、善より悪、怪物、奇人、月のほうが魅力的に感じてしまうのです。
世俗的なものが何の魅力もないものに思えてしまう感性が、私の中に養われていきました。
たとえば「幻想の画廊から」で、初めてシュルレアリスムを知り、バルテュス、マグリット、ダリ、
マックス・エルンスト、エッシャーの名を知りました。
美術に惹かれたきっかけでもあります。
澁澤の文章はちょっと難解ですが、それがまた大人な感じで、なんとか理解したいと頑張ったもんです。

河出文庫コレクションは...
「東西不思議物語 」 「世界悪女物語」 「妖人奇人館」 「異端の肖像」 「幻想の肖像」 「幻想の彼方へ」 
「黒魔術の手帖」 「毒薬の手帖」 「秘密結社の手帖」 「華やかな食物誌」 「女のエピソード」  
「エロスの解剖」 「記憶の遠近法」 「夢の宇宙誌」 「思考の紋章学」 「胡桃の中の世界」 
「ヨーロッパの乳房」 「黄金時代」 「悪魔の中世」 「サド侯爵あるいは城と牢獄」 
「城 夢想と現実のモニュメント」 「太陽王と月の王」 「旅のモザイク」 「夢のある部屋」 「洞窟の偶像」
 「世紀末画廊」 「幸福は永遠に女だけのものだ」

タイトルだけ読んでも心ときめきます。

耳に染みます、このコマーシャル

うえをむーいてあるこおおお...
思わず、テレビ画面の近くに座り込んでじっくり見てしまいました。
何のコマーシャルだろうと思ったら、最後に「サントリー」と流れました。
歌っていたのは、
三浦友和、小栗旬、大森南朋、矢沢永吉、ベッキー、宮沢りえ...そうです、
サントリーのコマーシャルに出ている人たちです。

急遽製作された特別バージョンだと思い、調べたらやっぱりそうでした。

【3月11日の東日本大震災後、日本が明日に向かって前進するためにサントリー
グループとして何かメッセージをお届けすることはできないか。
そこで、弊社の広告宣伝にご登場いただいている方々のご協力をいただき、
希望の歌のバトンリレーを行うことで、
少しでもたくさんの人の気持ちに絆の和を広げていくことが出来ればと考えました。
日本中で幅広く愛されている名曲『上を向いて歩こう』
『見上げてごらん夜の星を』の2曲を、ご厚意で参加いただいた総勢71名の皆さん一人一人が、
心を込めて歌い上げてくださいました。】

ということです。

「上を向いて歩こうA」編(60秒)の出演者は
和田アキ子/近藤真彦/竹内結子/富司純子/檀れい/本木雅弘/小栗旬/
ベッキー/堺正章/宮沢りえ/岡田将生/松田聖子

「見上げてごらん夜の星をA」編(60秒)は
矢沢永吉/宮沢りえ/萩原健一/ベッキー/近藤真彦/小雪/堺正章/
三浦友和/本木雅弘/松平健/檀れい/永瀬正敏

「上を向いて歩こうA」編(30秒)は
三浦友和/高島彩/小林克也/堀北真希/近藤真彦

「上を向いて歩こうB」編(30秒)は
竹内結子/高橋克実/榮倉奈々/小栗旬/大森南朋

「上を向いて歩こうC」編(30秒)は
大滝秀治/本木雅弘/ベッキー/加藤茶/仲本工事/堺正章

いずれも、この順番でワンフレーズずつ歌っていますよ。
たぶん、期間限定で流れるはずなので、お見逃しなく。
耳と心に染みわたりますから。
どのバージョンに出会いたいですか?

客席オールスタンディングで勘太郎に拍手

勘太郎③.jpg
九州新幹線全線開業記念として開催された博多座の3月の「桜壽博多座大歌舞伎」、
ご存じのように体調不良のため、中村勘三郎が休演することとなり、長男の中村勘太郎が代役公演となりました。

夜の部はコクーン歌舞伎や平成中村座でお馴染み「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」。

これは串田和美演出・美術で、ニューヨークやベルリンなど海外でも大評判だった話題作。
大阪で見ましたが、勘三郎だからこそ演じられるという評判の舞台です。

たぶん、大勢の方がそう思い、勘三郎の「夏祭...」、それも九州では初演となるこの舞台を見たくて18000円もするチケットを買ったことでしょう。
私ももちろんその一人です。
それが勘三郎休演、勘太郎が代役をやると聞いて、「大丈夫だろうか?」とこれまた多くの人が感じたはずです。

しかし私は何を隠そう、勘太郎のファンでして、彼の成長を見守っている一人なのです。
2月には東京で勘太郎と藤原竜也の「ろくでなし啄木」も見てきました。

博多座の初日は3月2日。
実は勘太郎、その「ろくでなし啄木」に2月26日まで出演していました。
それも半端じゃない台詞の量と動きでした。
いったいいつ「夏祭...」の練習をするのだろうか?と心配もしました。
もうこれは見守るしかないだろう!失敗と言われてもいいじゃないか!
でももしかしたら、歴史的な舞台を見ることになるかもしれないという予感もありました。
というのも、いずれ勘太郎がこの舞台をやるはずで、
その初演をどこよりも早く、博多で見られるのだと思ったら、急に楽しみになったのです。

そして...歴史的な舞台に立ち会ったと確信しました!

若いので台詞の深みはまだまだと思いましたが、立ち居振る舞い、動きに切れがあり、若さあふれる芝居です。
そして表情がすごい!写楽の役者絵を思わせる迫力あるものです。

コクーン歌舞伎、平成中村座で主人公・団七にどろどろになりながら殺される義理の父親・義平次を演じる笹野高史さん(淡路屋の屋号も持ってますが、歌舞伎界のひとではありません。自称・民間出身)が自身のツイッターでこんなことをつぶやいているのを発見しました!

「中村勘太郎さんの、団七が見ものだと発信いたします!相手役からの発信です!すでに若手歌舞伎俳優ではピカイチの存在ですが、父上様の当たり狂言という、もう一つプレッシャーがプラスされての役!光が発射されているかのような、立ち姿は惚れ惚れします!!」

これがすべてを物語っています。
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最後の捕り物場面「屋根上」は団七を捕らえようとする立ち回りが見ものですが、
この場面での勘太郎の動きがタダモノではない!

串田演出独特のセットが斬新で、この最後の場面で大いに盛り上がり幕を閉じました。

幕が終わっても拍手が鳴りやまず、オールスタンディングで拍手をするなんて、歌舞伎ではあまり体験しないことも起こりました。

演出の串田和美さんも博多座においでで、出演者に呼ばれて檀上に。
勘太郎にふさわしい演出をされていたのかなあと想像しました。

ザ・シェイプ・オブ・シングス~モノノカタチ~、このタイトルが語るモノ

シェイプオブシングズ.jpg
超プラチナチケットを手に、ももちパレスに向かいました。

客の99.9%は女性、
それもそうでしょう、主役はあの向井理くんなのですから。

原作はアメリカの脚本家・ニール・ラビュート。
2001年ロンドンで賞賛と波紋を呼んだ舞台の翻訳もの。
ロンドンでは異例なことに、テレビ番組でこの作品についての討論番組が放映されたそうですから。
見終わったらそうしたくなるのも分かります。

演出は演劇ユニット・ポツドール主宰の三浦大輔さん。
昨年、彼の「裏切りの街」を見て、キャスティング(田中圭・秋山奈津子・松尾スズキ・安藤サクラ)独特の音楽と演出ぶりに圧倒されたのでした。

前回の「裏切りの街」も男女4人のお話。
今回もそうです。

美大生のイブリン(美波)は美術館でアルバイトをする小太りで冴えない姿のアダム(向井くん)に出会います。美術品にある落書きをしようとするイブリン、それを止めることも面倒くさい弱気なアダムに関心を抱いたイブリンと彼は付き合うことになるのですが、その目的は...というお話です。

この芝居、原作が良い!脚本が良い!台詞が生きている!
そして演出・音楽が良い!
女優・美波が良い!
もちろん、向井くんの頑張りもありますが、これは見るべき芝居でした。

ラストの美波扮するイブリンが卒業制作で発表した作品とは何だったのか?
これは衝撃です!
真っ赤なスーツを着て美波が語るのを観客席に椅子を持ってきて、残りの3人が聴いています。
最初の二人の出会いがラストを暗示していることが、終わって分かるのですねえ。
素晴らしい演出でした。

三浦大輔さんの舞台には、本当に上手い役者しか登場しません。
そして背が高い、ちょっと気弱な役を演じられる役者(田中圭・向井理)と、役になりきって強い女性を演じられる役者(安藤サクラ・美波)が好きなのだなあと改めて感じました。

三浦大輔、美波、要注目です!
美波は野田秀樹、蜷川幸雄、長塚圭史にも気に入られ、彼らのミューズとして舞台に出ています。
福岡に来たらお見逃しなく!
 

アートの森の小さな巨人...と名付けられたハーブ&ドロシー

残念ながら3月18日で映画は終了してしまいましたが、もしチャンスがあればぜひご覧ください。
映画公式HP『ハーブ&ドロシー』
ニューヨークに住む普通の夫婦の話です
でも違っていたのは!
夫妻はものすごいアートコレクターだったのです!

ハーブ・ヴォーゲルは1922年生まれ、高校を中退して郵便局に勤めていました。
ドロシー・ヴォーゲルは1933年生まれ、大学院を卒業後、公立図書館に司書をしていました。

1962年に結婚し、それからハーブは夜学で美術を学びます。
ドロシーは特に美術には興味なかったのですが、ハーブの影響で猛烈に美術に詳しくなっていきました。

そして、二人がはじめたのがアートコレクションです。

ドロシーの給料を生活費に充て、ハーブの給料をすべて現代美術品を購入する費用に充てました。
1LDKのアパート住まいだったので、二人が決めたアート購入の約束は
①ハーブの給料で買えることと
②アパートに入ること
 
でした。
そこで、作品をミニマルアートとコンセプチュアルアートに絞ります。
ニューヨークである展覧会にはほとんどすべて足を運び、直接アーティストと交渉して購入します。

彼らが買いたいと思う作品の基準は「美しい・きれい」「気にいった」だけ。
展覧会の初日、客たちがワインなどを片手に語り合っている中、二人は真摯に作品を見て回ります。

そして40年の歳月をかけて集めた作品の数、4,782点。

購入した作家たちの顔ぶれは、
ドナルド・ジャッドクリストとジャンヌ・クロードリチャード・タトルチャック・クロース
など、今や世界的なアーティストたち。

こんなドラマチックな話は実話で、このドキュメンタリー映画を撮ったのが日本人の女性監督・佐々木芽生(めぐみ)さん。
夫妻のことはアメリカでは有名で、映画にしたいと申し出る監督やプロデューサーは数多くいたようですが、実現させたのは彼女だけでした。
撮影には4年間の歳月をかけたので、夫妻はすっかり監督を信頼していたようです。

ただ1場面、カメラが外に出されたことがありました。
それは、作家との値段交渉場面でした。
 
クリストのドローイングが欲しいとアトリエを訪れたら、あまりに高価で手が出なかったそうですが、後日、クリストのパートナーであるジャンヌが夫妻に電話してこう告げたとか。

「私たちは制作で家を長期間空けるけど、その間、猫を預かってくれたらドローイングを譲っても良いけど」と。

夫妻、大の猫好きで、もちろんすぐにOKの返事をして、クリストの有名な「ヴァレー・カーテン」(コロラド州ロッキー山脈の400メートルに及ぶカーテン)を手に入れたのです。

夫妻は収集したコレクションを1点もお金に換えることなく、1992年、コレクションのすべてをアメリカ国立美術館ナショナルギャラリーに寄贈することを決意しました。
1000点余りは同美術館の永久保存となり、残りは全米50州の美術館に50点ずつ寄贈したのです。

まるで、嘘のような本当の話。

アートとともに生きるって、地位やお金がなくとも可能だということをハーブ&ドロシーが教えてくれました。