福祉をかえる「アート化」セミナーに参加

平成23年度の福岡市共働事業提案制度として採択された「障がい者アートプロジェクト事業」のプロジェクトのもう一つの催しとして、1月14日(土)~15日(日)の2日間「福祉をかえる『アート化』セミナー福岡」が開催されました。

九州で初めての開催、障がいのある人たちのアート活動を仕事として開拓するために、人材育成とともに障がいのある人たちの新しい仕事を生み出すノウハウを学ぶというセミナー。

障がいのある人たちのアート活動は全国的に盛んになり、福岡市内でも活動の中心としている事業所や作業所が増えてきています。
しかし、Tシャツやカレンダーなど事業所ごとのオリジナル商品としての展開は増えつつも、著作権の2次使用や企業などとの商品展開、また、作品を販売する巡回展など、施設外での販路や公共へのアウトプットは未だ発展途上の状況です。

このセミナーでは「障がいのある人たちのアート活動の可能性を広げる」を目的に、福祉施設スタッフや表現活動をサポートする人たちを対象に、アート活動の可能性を考える講義をはじめ、作品や著作権などの管理、アートを仕事に展開するノウハウなどを学ぶというもの。

なぜ、私が参加したかというと、実は、このセミナー主催者のひとつである障害福祉サービス事業所「工房まる」の理事なんかをしとるのです。

きっかけは、10年ほど前、九州大学大学院の修士課程時代に、福岡市内の福祉作業所、福祉施設の実態を調査するというアルバイトをして、30ヵ所ほど回りました。
その中に、まだ無認可の福祉作業所だった「工房まる」と出会い、それ以来応援してきたわけです。

福祉作業所の多くが、アルミ缶の収集やビーズ刺繍、クッキー、石鹸などを作って収益をあげているなか、障がい者の人たちが描いた作品で収益をあげているのを見て、可能性を感じました。

そして、それらのモデルとなっているのが、奈良県にある「たんぽぽの家」だと知りました。 

今回のセミナーで基調講演をされたのが、「たんぽぽの家」を創設した播磨靖夫さんです。

播磨さんは平成21年度の芸術選奨 文部科学大臣賞(芸術振興部門)を受賞されています。

受賞理由は「早くから社会福祉活動の中にその重要な要素として芸術活動を位置づけてきた先駆者の一人。特に、周縁にあると考えられていた「障害者アート」を大きく見直し、それぞれの表現の違いを個性として捉え、障害者の表現こそが、芸術活動の全体を多様化し、芸術運動として既存の規範を超えるものとして「エイブル・アート」を提唱した。これにより福祉の分野と芸術分野の双方に大きな果実をもたらした。国際的な貢献も大きく、播磨氏は、長年にわたる活動のひとつである「わたぼうし音楽祭」をアジア太平洋にも広げ、平成21年には10以上の国際ネットワークを樹立するに至った。」というもの。

播磨さんはもともと新聞記者で、高度成長期に取材をしながら、この繁栄の中で置き去りにされている人たちがいると感じ、置き去りにされてきた人たちをどうにかしたいとの思いから障がいのある人たちの施設づくりを思い立ったそうです。

もう人間的にも魅力たっぷりの方で、話してても飲んでても楽しい!
ずっと話をしていたいと思わせる方です。
機会があったら、ぜひ奈良県の「たんぽぽの家」を訪問してください。

播磨さんの影響を受けて福祉施設を運営している人が、いまや全国にたくさんいます。このアート化セミナーも、運営母体となっている「アート・エイブル・カンパニー」も「たんぽぽの家」から出発しました。

これを読んでちょっとでも興味を持たれたら「工房まる」でも遊びにきてください。

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