『ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』を自主上映します

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「映画業界は不況知らず」なんて言われていた時代がありました。
でもここ数年、まさかと思うような配給や小さな劇場が次々つぶれています。

映画宣伝は簡単に言うと、その映画を広く知ってもらう事がお仕事。
でも情報を露出してくれる媒体も不況で営業の話しかできないような、何だか社会全体がギスギスした感じ。そんな中、例えば新聞に広告1本出しただけで宣伝費がなくなってしまうような予算のない映画ばかりを抱えて、一体どうやって、何のために映画を"宣伝"するのか分からなくなってきた...と目標を見失っていた時にこの映画に出会いました。

"車椅子や松葉杖で生活するストリートバンドのサクセスストーリー"
「ちょっと重そう」「ターゲットが絞られるタイプのドキュメンタリーだな」
と思いました。

でもこの映画は、そんな野暮な先入観や思い込みを鮮やかに裏切る作品でした。

たくましく、どこまでもポジティブ!
彼らの音楽も生き方も、とにかく全てがカッコよかった。粋でした。
いい映画に感化される、久々に目が覚めるような興奮を味わいました。

「必ず路上生活から抜け出す!」「おれたちは成功する!」
ポリオが原因で障害を持った彼らですが、安い同情なんて全く寄せ付けません。バイクを改造したイカした車椅子に乗り、ちょい悪オヤジファッションで町を流すビリリのメンバー。貧しいストリートキッズを雇ってやったりもするし、家族はもちろん子だくさんで、ミュージシャンとしてだけでなく手に職を持って、地にしっかり根付いた生活をしています。

そして"路上生活者のスポークスマン"を自負している彼らの歌と歌詞がいい。

段ボール(トンカラ)で寝てた俺がマットレスを買った
同じことが起こりうる お前にも 彼らにも
人間に再起不能はない 幸運は突然 訪れる
人生に遅すぎることは絶対ない ~「トンカラ」より

彼らは空き缶で作った手作りの一弦楽器を演奏し、家族を養おうとしている1人のストリートキッズ・ロジェと出会い、バンドの重要なメンバーとして、またある時は親子のように育てていきます。
一方で、ビリリに惚れ込み、一文無しになっても彼らの素晴らしさを世界に発信したいと奮闘する監督たち"映画人"の物語も同時進行。
5年の歳月の間に、出来すぎたドラマのように彼らを襲う困難の数々。
しかし、そのたびにバンドのリーダーでもあるパパ・リッキーは「そんな日もあるよ」と前向きにメンバーを、そしてカメラの向こうにいる監督たちを励まします。
やがて彼らが練習場所にしている動物園での野外録音を経て、待望のアルバムが発売。その確かな音楽性で彼らはたちまちヨーロッパツアーを行うまでに成長します。

これは彼らのサクセスストーリーであり、ロジェの成長物語であり、なにより監督たちと彼らの信頼の物語でもあります。

この素晴らしい映画との出会いをきっかけに、映画宣伝というものを改めて見つめなおすいい機会になりました。「映画の良さを、たくさんの人に伝えたい」そんな初心にかえった純粋な気持ちで行う上映イベントです。ぜひ、お越しください。
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