花見の宴前に、ぜひ読んでほしい「実さえ花さえ」

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ご無沙汰してました。
あまりに面白く、紹介したくなりました。
ぜひ、花見の前に読んでください。

コピーライター歴25年の浅井まかてさん、書いた初めての小説で講談社の第3回小説現代長編新人賞 奨励賞受賞したのが「実さえ花さえ」。
この本、実は音楽プロモーターBEAの社長、通称サブちゃんが「これ、おもしろいけん、読んでみてん」と言って貸してくれました。

一気に読み終えてしまいました。
1作目とは思えない熟練の味です。ページをめくるのが楽しみでもあり、読み終わるのが寂しくもあり。

物語は松平定信が先の老中として登場するので、時代は19世紀に入ろうという頃かな。武士だけではなく、庶民の間にも花いじりが道楽として愛されていた時代の話です。

登場人物すべてが魅力的で、しゃべる言葉も美しい。
日本の美しさが花に、樹木に、景色に食べ物に、人柄に表現されている稀有な物語となっています。
桜草から始まり、ソメイヨシノで終わる花尽くしのお話、自然の中から生まれた草木が人の手を介すことで、さらに美しく生まれ変わる様子が、興味深く描かれます。

登場人物をめぐって、これがまたミステリーのような展開で、胸をドキドキさせながら読みました。
そして読み終えると、「ぜひ読んでみてん」と薦めたくなる、サブちゃんの気持ちが良く分かりました。

タイトルは、「命あるものはすべて、実さえ花さえ、その葉さえ、今生を限りと生きてこそ美しい」この一節から生まれました。
テレビドラマにでもしてほしい作品です。

今年の花見では、この本で得た知識を偉そうに講釈していると思います。